観劇やらライブやら本やらCDやらの感想を好き勝手に。

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その小さな公園に、

 子猫が、いた。鳴き声に反応して繁みに近づいたのだから、そこに何がいるかは当然分かっていたはずなのに。何故か僕は一瞬、言葉をなくしてしまった。
 小さなダンボールに入れられた、一匹のトラ猫。その下に敷いてあるフリース素材のひざ掛けと、近くを歩いているだけでは決して見つからない場所に置かれていたという事実が、何だか酷くアンバランスだ。
 僕の存在に気づいたのだろう。そいつは鳴くことを止め、箱の隅で小さな体を更に小さく丸めて大きな瞳をこちらに向けた。
 手を伸ばし、頭を撫でてみる。触れた瞬間、僅かに体をビクつかせたものの、すぐに目を閉じて喉を鳴らし始めた。それどころか、自ら僕の手に身をすりつけてくる。
「おいおい」
 思わず零した声に、薄い色がつく。はぁと溜息を吐くと、その白色は僅かに上昇して消えていった。
 しょうがない。
「引き取り手が、見つかるまで。だからな」
 ダンボールを拾い上げ、胸に抱える。体から手が離れたことに淋しさを覚えたのが、猫は目を開けて僕を見つめると、にぃ、と鳴いた。
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桜が咲いたので

 見事な花を咲かせているその大木の、根元を掘り返してみた。

 出てきたのはたくさんの動物の死骸。中にはもう殆ど骨になってしまったものもあり、もう何年もこうして誰かが埋め続けているのかもしれないと思った。
 桜が薄紅に色づいているのは、その根元に埋まっている死体の血を吸っているからだ。
 その話は本当だったのだろうか。
 いいや、もしかしたら、この桜は死骸の血を吸っていたわけではなく、ただ死骸を肥料として育っただけなのかもしれない。
 一体、どっちなのだろう。

 それならば、と、私は実験をしてみることにした。
 大きさの近い二つの桜の、片方の根元には血液を巻き、もう片方の根元には血液を抜いた死骸を埋める。
 すぐに変化が出るとは思えないけれど、それなら次の春までそれを続ければいい。

 思い立ったが吉日。
 早速死骸を作ることにしよう。
 そう、確か。隣に住んでいる青年が血の気が多くて困っていると、ご近所さんたちが話していたような気が――。

雪が融けてきたので

 「彼」ではなく「彼女」なのかもしれないと思った。

 先日作った雪だるまが子供を産みはじめた。
 子供といっても小さな雪だるまを産んでいるわけではない。溶け出した雪だるまの中から様々なものが零れ出てきたのだ。
 どうやら、彼、いや、彼女を作るときに色々と巻き込んでしまったらしい。

 日が経つにつれて、彼女の体から様々なものが零れ出てくる。
 タバコの吸殻。雪見だいふくの容器。キャラクタの描いてある小さな靴。ぞうの形をしたジョウロ。雀の死骸。
 生まれてくるものは次第に大きくなっていく。そして子供を産むたび、彼女の体は小さく、いびつになっていった。

 そして昨日。彼女は命を懸けて最後の子供を産んだ。
 それは本当に子供だった。
 青白い足は三日前から見えていた。だが、子供の上半身は彼女の中心部に埋もれているらしく、なかなか融け出して来なかった。
 もしかしたら、この子供は生まれないまま、彼女と共に次の冬を迎えるのかもしれない。そう思ったこともあった。
 だが彼女は諦めず、ついにその子供を産み落とした。雨の手を借りて。自分の身を水に還して。

 生まれてきた子供を拾い上げると、それは雪だるまの子というに相応しいほど冷たかった。
 愛おしい。
 彼女が産んだ他のものたち同様、私はその子供に対してそんな気持ちを抱いた。彼女の生まれ変わりであるようにさえ思えた。
 この子を育てよう。ふと思った。
 そのためにはまず、大きな冷凍庫を買わなくてはならなかった。今はまだ、そんな金銭的余裕は私にはない。

「狭いけど、少しの間、我慢してね」

 産声に泣いているのか、子供の頬を滴が伝う。
 私はその頬にそっとキスをすると、母親の頭に乗せていたポリバケツにその子をしまった。
 

【自己紹介】

 

【成瀬晶】
ナルセアキラ。※not本名
アラサー。フリーター。
シスターズ(妹)とも…。

カゲロウ
オリジナル小説サイト。
角川ケータイサイトに投稿したものやGARNET CROW歌詞小説等。
リンクは出来ればこちらに…。

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